お祖母様から貰った押し花シリーズのリデザインの第二弾。3月に躑躅(つつじ)の押し花のトレーをお渡ししてからひと月あまり、タワー型のアクセサリートレーが完成しました。
リデザイン案としては、アクセサリートレーと決まっていましたが、デザインはお任せとのことで、どんなものにしようかというところから工房内で打ち合わせを始めました。
依頼主からは、収納力が欲しいとの要望は受けていたので、立体的な発想にて、回転式のタワー形状にすることにしました。大きめのベースに高層のタワーを一本立てて、その横には、低層の収納スペースを設けます。
製作工程
まずは、高層のタワーに設ける4個のトレーを製作していきます。
トレーの構造は、底板を入れての三層構造としました。材質は、上から「ケヤキ」「桂」「杉」となります。木の材質を変えることで、デザイン的なコントラストと見映えを意識しました。
トレーの中心を決めて、転軸用の穴を開けるための芯出しを行ないます。
最上部のケヤキ材部分には、四辺に斜めカットを施し、デザイン的な優しさを演出。更に、柿渋と蜜蝋を塗り、ナチュラル仕立てのアクセントカラーにします。
次は、ベース部分です。材質は「松」で製作、安定感を意識します。
低層の収納スペース(トレー)を作っていきます。まずは、トレーの枠を取り付けます。
そのトレーの蓋にもなる、もう一つのトレーを製作します。
次に、木製のスペーサーを製作します。転軸とトレーの回転を良くするために、ナイロン製のスペーサーと、木製のスペーサーを噛ませます。そうすることにより、トレーとトレーの間に最適なスペースとクッション性を確保することができます。
低層のトレーの蓋トレーと、高層のタワーの最下段のトレーには、スエードを敷きました。色は、依頼主の好きな藤色を選択します。その他のトレーには、全て、押し花が包まれていたティッシュを敷いていきます。
押し花やティッシュの配置を考えていきます。
押し花の取り扱いには、前回の作業で経験したとはいえ、やはり神経を使いました。
今回の押し花は、牡丹(ぼたん)がメイン。大きめの牡丹の押し花とお祖母様の手書きの文字入りテイッシュは、収まり方と見映えを考えて、低層の一番下の四角いトレーに敷き詰めることにしました。
押し花とティッシュを配置したトレーには、円形のアクリル板をセットし接着をします。その接着剤を目隠しするために、外周に皮ひもをつけました。結果的には、枠として活かされ、締まった感じになったと思います。
低層の蓋トレーには、藤色スエードのみセット。アクリル板を簡単に取り外せるように吸盤をつけています。アクリル板を取り外して、依頼主自身が、お好みの素材を挟めるようにしました。
蓋トレーをしていると、下のトレーに敷き詰めた押し花の牡丹とティッシュは見えませんが、蓋トレーを開けた時の楽しみとして演出することができたのではないかと思います。
蓋トレーは、棒から外して、セパレート可能な構造にし、単体でも使えるようにしました。外した後の棒には、指輪などを掛けることができます。
ベースの底面には、滑り止め用の皮を貼りつけて、完成です(製作日数:約1ヶ月)。製作途中においても、色々とアイデアが沸き、それを具体化していきながら、完成させることができました。
高層のタワー側に4個、低層側に2個の計6個のトレーを設けることによって、収納力を確保し、実用性も持たせました。
4種類の木の素材と木目を活かし、押し花の存在感との協調により、製品として、優しい世界観を醸成します。木々のぬくもりの中で、牡丹(ぼたん)や躑躅(つつじ)の押し花たちが咲き誇ります。
スライドでご紹介
お祖母様が花の名前を手書きされたティッシュと押し花の全てを使用し、依頼主の元へお届けすることができ、ホッとしております。
依頼主から届いた感想です。
「大変素敵な作品。木の香りがよく、うっとりする手触りでびっくりしています」
「藤色がとても綺麗ですね。見てるとテンションが上がって元気になります。押し花も、おばあちゃんが、今くらいの時期に送ってくれたんだなあ…と思い出すことができ、幸せを感じることができます。本当にありがとうございます。」
お祖母様から依頼主へ届いたお手紙の消印が「平成10年6月20日」
25年という四半世紀もの時を経て、これからもずっと、お祖母様とともに依頼主を見守っていく作品となれれば、作り手冥利につきます。
お祖母様との想い出の手紙の押し花を活かした今回の案件は、リデザインの可能性を実感できる作品になりました。
使用イメージ
追記)
今回のリデザインを進めていくにあたって、打合せの初期段階にて、竹を使った次のようなプレゼンテーションを行ない、こんな形にしたいというイメージを伝えました。このようなアプローチを行ったことで、依頼主とのコミュニケーションを円滑に進めることができたと思います。
工房エイトジーの掲げる「リデザイン」の基本は、
リペア(修理・修繕・修復)が難しい対象品の素材を部分的に生かし、
新たなアイテムに作り替えるという考え方です。
愛着のある品が壊れたりしてしまった際などにおける
解決策の一つの選択肢として、ご提案しています。
愛着のある品に関して、何か困っていることなどがありましたら、
お気軽にご相談ください。
あなたの想いや感謝の気持ちに寄り添いながら
リデザインしていきます。
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remember(心に留める) , remind(思い出す) , redesign(新たなデザイン) .