こんにちは、西じぃです。リデザイン・ファイル〜タイルトレー編です。トレーのリデザインは、既に2回程ご依頼をいただいておりますが、海をテーマにした1作目や愛犬をイメージした2作目と違い、今回は、概念的なデザイン・テーマのリクエストということもあり、デザイン段階で苦労をしました。
今回のご依頼主様のデザイン・テーマのリクエストは「平和」。イメージとしては、風を感じるような軽やかで気持ちを明るくしてくれるものが良いということです。好きな色は、白色・黄色・ターコイズブルー。その辺りのヒアリングの基本情報を足掛かりに、デザイン案を考え始めます。
風を感じ、軽やかさを表現するために、今回は、タイルの直線的な使用を最小限にとどめることにします(扇状に配置など)。シンボリックに、鳥が花びらを運ぶ様子を描くことによって、「平和」を表現しようと思います。
同居している高齢のご両親のお世話や、ご自身のお仕事の関係で、なかなか長期の旅行が難しいとのことですが、ご依頼主様が瀬戸内の島々へ行ってみたいとおっしゃっていましたので、鳥の表現素材として、瀬戸内海の浜に打ち上がった陶片(シー陶器)を細かく砕いて、コラージュ的に使ってみようと思います。
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それでは、具体的に製作工程を見ていきます。
(1)ベースとなるトレーにタイルを配置していきますが、今回のデザインは、曲線を主体としているので、いつもの四角形のウッドタイルは使用せずに、対角線上に広がる二つの大きな扇状の間を1枚の木材のパーツで埋めることにします。そこには「平和」を表現する鳥と花びらの形を抜いていきます。
このパーツの正確なサイズを出すために、CADで図面を作成して、作業を進めていきます。ここでフリーハンドでの作業を進めてしまうと、最終的に細部が合わなくなり、仕上がりの精度に影響が出てきそうな感じがしますので…。
(2)対角線の二つの角の扇形のタイルは、長方形の既製品タイルを利用して、ダイヤモンドバンドソーでカットして作っていきます。ご依頼主様の好きな色の一つであるターコイズブルーを意識して、表情の異なるタイルを選びました。
(3)センターに配置する木材のパーツには杉板を使用し、木目を活かすため、サンドペーパーで研磨・塗装し、乾燥後、図面の形状にカットをして、鳥と花びらの絵柄を抜いていきます。
杉板は、反りが強く、重しを乗せて矯正したり、削ったり…元となるトレーの面にも反りがあったので、水平を出すのが大変でした。トレーの面のセンターに半分程度を構成するパーツとなるので、できる限りフラットになるように対応しました。
この木材のパーツ(杉板)に、塗料を塗付する前には、「目止め処理」を施しました。「目止め処理」 とは、との粉等で木材の塗装面を平滑に整えたり、小さな穴を埋めたり、塗料が下地に過度に吸い込まれたりしないようにするために行うもので、 一定の色彩を与えながら、木材の美しさを強調したりする重要な役割を担っています。
正直、完成品を見て、このような処理をしたかどうかは分かりにくいですし、作り手もいちいち説明はしません。それでも見た目の美しさや機能性・耐久性などにおいて、仕上がりには、雲泥の違いが出てきます。
(4)鳥用の陶片(シー陶器)を選び、型紙に合わせてカットしたり研磨をしたり、下準備をしていきます。準備が整ったら、センターに配置をする木材パーツの鳥形に抜いた部分に、一つ一つ、全体のバランスを考えながら、パズルのようにあてがっていきます。
研磨機を使って、陶片(シー陶器)のバリなどを綺麗にしていきます。
(5)トレーにタイルを接着していき、目地を整えて、最後に、上記の木材パーツを嵌め込み、接着をします。接着剤が乾いたら、完成です(トレーのサイズ:W 360mm × D 260mm × H 50mm)。
センターに配置する木材パーツのサイズが大きいのと、タイルの高さが、それぞれ違うので、境目の目地の処理には、かなり苦労しました。タイルの配置も慣れない扇状のため、丁寧に行いました。
鳥を表現する陶片(シー陶器)は、当初は、もう少し大きめの形で考えていたのですが、嘴(くちばし)や羽・尻尾などの鋭角な部分のこともあり、細かくすることにしました。
鳥と花の部分は、どうしても若干の凹凸が生じたので、水平性と安定性が求められるトレーの性格上、ここには透明レジンの処理を施すことで対応しました。
無事に、ご依頼主様の元へ納品できました。ヒアリングの際に、最初のリクエストとして、即座に「平和」と話されていたご依頼主様…、その願いが、きっと叶いますように。
ご依頼主様から、早速、連絡がありました。お気に入りのワインが、更に美味しく感じられるそうです。トレーのデザインが、明るく素敵なお部屋に合っているようで、何よりです。
工房エイトジーの掲げる「リデザイン」の基本は、
リペア(修理・修繕・修復)が難しい対象品の素材を部分的に生かし、
新たなアイテムに作り替えるという考え方です。
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